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歯性感染症を考える会

総会・症例検討会

平成15年3月8日

1.EBMのステップに従い考える

東京都開業 飯田喜人 先生

 

2.ガッタパーチャポイント突出を伴う難治症例

大阪歯科大学 吉田匡宏 先生

 

3.バイオフィルム ―最近の動向―

大阪歯科大学 福島久典 教授

 

4.21世紀の歯科材料

デンタルプラークに対して強い S−PRG配合レジン

朝日大学 山本宏治 教授

 

 

 

 

1.EBMのステップに従い考える

東京都開業 飯田喜人

Title: Influence of infection at the time of root filling on the outcome of endodontic treatment of teeth with apical periodontits.

Sjorgren U,Figdor D,Persson S, Sundqvist G

文献ガイド

G0 まずアブストラクトだけを読んで、感じたことを書いてから次に進んでください。

G1 研究の目的は?

G2 以前の研究と何が違いますか?

G3 何に関する研究ですか?(疑問の領域)

G4 どのような対象(歯)が選択されていますか?

  どのような介入(治療)がされますか?

G5 評価、比較したものは何ですか?

  また、判定の基準は何ですか?どのような状態を失敗としていますか?

  どのようなケースからバイオプシーを取っていますか?

G6 誰がどのように判定していますか?(ブラインド評価されていますか?)

G7 追跡期間は?またはその間に脱落したり除外された物はありますか?

G8 結果を読むに値する文献ですか?

G9 それでは結果を見ていきます。

@根管充填時細菌陽性+で成功した物   本/ 本=  %

A根管充填時細菌陽性+で失敗した物   本/ 本=  %

B根管充填時細菌陰性―で成功した物   本/ 本=  %

C根管充填時細菌陰性―で失敗した物   本/ 本=  %

@とBの統計的な有意差は?

組織所見からわかったことは?

根管充填の状態と成功率の関係は?

根尖病巣の大きさと成功率の関係は?

G10 この研究は研究の目的を達成できましたか?

G11 この結果をどう自分の臨床に生かしますか?

G12 どのようなタイプの研究ですか?

G13 どのような分析を用いていますか?

 

4.ガッタパーチャポイント突出を伴う難治症例

大阪歯科大学口腔治療学講座  ○吉田匡宏

<緒言> ガッタパーチャポイントの根尖孔からの突出は、オーバーインスツルメンテイションによる根尖孔の破壊と術者の不注意によって生じる。根尖孔から突出したガッタパーチャポイントについては、根尖周囲組織に器械的刺激を及ぼすだけでなく、ガッタパーチャポイント自体が汚染され持続的な感染源となることも危惧される。根尖孔から突出しているガッタパーチャポイントは再根管処置において邪魔なものでしかない。外科的に除去するのが最も確実ではあるが、外科的侵襲を避け、一般には根管から除去を試みることが多い。通常用いられる手法は、ファイルをガッタパーチャポイントに食い込ませて一気に引き抜く、いわゆる「コルク抜き」といわれるものである。しかし、ファイルの食い込みが不十分で滑ってしまったり、ガッタパーチャポイントが根尖孔付近で千切れてしまったりすることも多く、成功率は決して高くない。私は、このような症例に対してクレンザー(バーブドブローチ)を用いて、突出したガッタパーチャポイントを効果的に除去している。今回、2つの難治症例を例に挙げて、その手法を紹介するとともに、その治療経過をしめす。

<症例1>患者は76歳男性。上顎左側第1小臼歯の執拗な瘻孔からの排膿を主訴として来院した。瘻孔以外の臨床症状は認められなかったが、根尖孔から#35程度のガッタパーチャポイントが約5mm突出しており、根尖部に大きな限局性の透過像が認められた。メインポイントが細いため、ポイントと根管壁との間に#20のファイルを数箇所挿入し、ポイントを緩めるとともにクレンザーを挿入するスペースを作った。作業長の約3/4程度までクレンザーを挿入し、対角に#20のファイルを挿入してポイントをクレンザーに押し付け、クレンザーとファイルでポイントを挟み込むようにして一気にポイントを除去した。その後、チェアーサイド嫌気培養システムを用いて根管治療をおこない、培養陰性を得て根管充填した。

 

<症例2>患者は49歳男性。上顎右側第2小臼歯の再治療を依頼された。執拗な持続的鈍痛、打診痛と根尖部圧痛に悩まされていた。再治療のために根管充填材を除去中、ガッタパーチャポイントの一部が根尖孔から4mm程度突出した。チェアーサイド嫌気培養システムを用いることで比較的早期に臨床症状は消失し、培養陰性が得られた。患者の強い希望でガッタパーチャポイントの除去を試みたがファイルがガッタパーチャポイントを捉えることはできなかった。近心投影のエックス線写真を撮影した結果、ガッタパーチャポイントが根尖の頬側部に位置していることが明らかになった。根尖孔は大きく破壊されていたためクレンザーを湾曲させ、根尖周囲組織に挿入し旋回させつつ掻き揚げるようにして根管内に取り込んだ。その後、再度培養陰性を確認し根管充填した。

<考察と結論>クレンザーはブローチ針の先端部に鋭利な棘をつけた形状をしており、軟らかいものには絡みつきやすい。この特性を利用すれば、突出したガッタパーチャポイントを除去する有効な手法となると考える。

 

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