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歯性感染症を考える会

総会・症例検討会

 

 

平成16年2月28日

 

 

 

 

1.いかにして早く無菌化を達成できるか

            大阪市開業 福西 一浩    2:00〜2:30

 

 

2.「チェアーサイド嫌気培養システム」の効果と問題点

             東京都開業 吉田 格    2:35〜3:05

 

 

3.口腔外科領域の感染症

            大阪府開業 多々見 敏章   3:10〜3:20

 

 

4.当院における『チェアーサイド嫌気培養システム』

            兵庫県開業 楠瀬 昌宏    3:25〜3:45

 

 

5.無菌獲得が困難で外科的療法を併用した症例

             兵庫県開業 中川 豪晴    :50〜4:10

 

 

6.難治症例をどう考えるか?

大阪歯科大学口腔治療学講座  吉田匡宏   :15〜4:30

 

 

7.根管内バイオフィルムの実体

朝日大学 山本宏治教授   :35〜    

 

 

 

1.いかにして早く無菌化を達成できるか

            大阪市開業 福西 一浩

 

 私の毎日の臨床の中で根管治療を行わない日はない。

その症例を大別すると

1.非可逆性歯髄炎と診断した歯牙

2.歯髄壊死と診断した歯牙

3.根尖病変は存在しないが、根管充填が不十分な歯牙

4.根管充填に大きな問題はないと思われるが、自覚症状がある歯牙

5.根尖病変が存在する歯牙

に分けられる。

 根管治療の追跡調査を行ったいくつかの研究から、根管治療の予後は術前の歯髄や根尖部歯周組織の状態に左右されることがわかっている。共通して言えることは、抜髄根管や歯髄壊死では、成功率が高いのに対して、既根管充填歯で根尖病変が存在する歯牙の再治療の成功率は有意に低い。そこで今回、抜髄根管と感染根管に分けて、「いかにして早く無菌化を達成できるか」という観点にたって考察したいと思う。さらに、機械的拡大の限界を知ったうえで、それを補うためにどうすればいいのかについても症例を通じながら検討したい。

 次に難治性根尖性歯周炎と呼ばれる症例を再考したい。難治性根尖性歯周炎とは、根管治療の一連の操作が適切にかつ十分に行えたにもかかわらず、臨床症状が軽減しないか、もしくはX線写真上透過像が消失しない症例を指す。感染源が根管内にない場合や根管の見落としなどの明らかに診断の誤りと考えられる症例は、難治性に含めない。原因として、物理的理由と生物学的理由に分けられるが、とくに後者の場合で最近注目を浴びているのが、根尖孔外でのバイオフィルムの形成であろう。まだ、結論が出ていないと思われるが、現時点での臨床的考察および研究報告を鑑みることで、その可能性について考察したい。

 また、本当に難治性根尖性歯周炎と診断された場合、、治療法として外科的歯内療法が非常に有効となる場合があり、その実際を紹介したいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.「チェアーサイド嫌気培養システム」の効果と問題点

 

             東京都開業 吉田 格 

 

チェアーサイド嫌気培養システムを導入し4年が経とうとしている。本システムの有用性に驚く一方、適用以前に行うべき事が多いことにも気づく。今回それらをまとめ「再治療の現場から根尖治療を再考する」と題し入稿させていただいた。本会ではその要旨を供覧いただくとともに、本システムはもとより根管治療全般の疑問点も提示させていただく。諸先生方から御教授いただき、同時に本会の発展につながれば幸甚である。貴重な機会を提供してくださった福島教授はじめ諸先生方に感謝申し上げる。

 
   1・再治療の問題点
   2・チェアーサイド嫌気培養システムの問題点
   3・培養や抗菌剤適用の前に
      ・歯肉縁下マージンの縁上化
      ・仮封材の選択
      ・拡大法とファイルの選択
      ・水酸化カルシウム製剤
      ・レーザー
      ・マイクロスコープ
   4・症例供覧

 

 

3.口腔外科領域の感染症

大阪府開業 多々見 敏章

 

 

4.当院における「チェアーサイド嫌気培養システム」

            兵庫県開業 楠瀬 昌宏

 

1.はじめに

2.メインポイント、アクセサリーポイント、ファイルの滅菌方法

3.根管拡大方法

4.根尖#40まで拡大(抜髄、感染根管の区別はなし)

5.成績

1)抜髄根管における陽性率

2)感染根管における陽性率

3)培養陰性になるまでの治療回数

6.菌が出たときの対応方法

7.まとめ

 

5.無菌獲得が困難で外科的療法を併用した症例

             兵庫県開業 中川 豪晴

 

1.        症例概要

2.        本症例から得られた考察

3.        外科的療法のメリット、デメリット

1)         外科的療法の前に

2)         根尖掻爬術、根尖端切除術、意図的再植術

      4. 根尖治療に要求されるもの

 

 

 

 

6.難治症例をどう考えるか?

大阪歯科大学口腔治療学講座  吉田匡宏

 

 歯内治療における難治症例は

 

1.      技術的困難症例

2.      閉鎖性難治性感染症例

1)感染源が根管に限定されているもの

2)根管以外の感染源を持つが、歯槽骨内に限定されるもの

3.      開放性難治性感染症例

口腔と交通する根管以外の感染源を持つもの

 

と言うように分類できるのではないかと考えています。

技術的困難症例は術者の技量にもよりますが、いわゆる歯内治療不適応症例です。

問題なのは、難治性感染症例です。

 閉鎖性のものと開放性のものがあり、それぞれ必要な処置と予後に大きな差があるのですが、その見極めを臨床で行うことは決して容易ではありません。

“根尖治療”が適応なのは主に閉鎖性難治性感染症例なのですが、ついつい開放性難治性感染症例に手を出してしまい、困難な状況に陥ってしまっていることがあります。

私は、このような状況に陥らないため、あるいは陥ったときに状況を判断するために次のような基準を用いています。

 

1.      4回抗生剤局所投与後の細菌検査時のコロニー形態から見た細菌種は1種、多くても3種程度に減少しており、これまでに急激に増加したことがないこと。

2.      4回抗生剤局所投与後の細菌検査時のコロニー数が30CFU前後あるいはそれ以下であること。

3.      過去5回の細菌検査でコロニー数は安定あるいは減少しており、これまでに急激に増加したことがないこと。

 

以上の、基準をクリアーしている症例では“根尖治療”が有効であると考えられます。比較的短期間に培養陰性が得られるでしょうし、予後も期待できます。しかし、稀に、後で急性化や細菌数の急増を生じる事がありますが、この場合は速やかに外科的治療に踏み切るほうが賢明です。

また、4回抗生剤局所投与後の細菌検査までにコロニー数や菌種に急激な増加が見られたり、4回抗生剤局所投与後の細菌検査でもコロニー数が100CFU以上であったりするような症例では外科的処置に治療方針を変更したほうが良いと考えています。

この基準は、従来の難治症例の臨床的分類やエックス線写真あるいは歯科用CTなどの形態的診断とは異なり、「チェアーサイド嫌気培養システム」による“根尖治療”が有効なのか、治療を阻害している因子(持続的感染源)は制御可能なのかという機能的な面での判断基準になることが特徴です。

経時的な臨床診査、エックス線写真あるいは歯科用CTなどの形態的診断とともに用いれば、より的確な状況判断が可能になると考えています。

 

 

 

7.根管内バイオフィルムの実体

朝日大学 山本宏治教授

 

 保存不能と判定された抜去歯(100)の根管内をSEM観察し、以下の結果を得た。すなわち、SEM所見においては、根管内に球菌様および桿菌様のものが混在し、根管歯冠側には球菌様細菌の割合が多く、また、根管中央部から根尖にかけては、桿菌様細菌が多く観察される傾向にあった。さらに、菌体外多糖様構造物と細菌塊が認められ、バイオフィルムの形成が確認され、、球菌群の coaggregation(共凝集)様の所見も得られた。次に根管内に観察された細菌塊の様相を S-3000FBN を用いて観察したところ、層状の構造を認めた。

 

 

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