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平成13年度総会

症例検討会

平成14年3月16日

1. 難治性根尖性歯周炎に関する細菌学的研究

大阪歯科大学 吉田匡宏

 

2. チェアーサイド嫌気培養装置の臨床応用8

――Ni-Ti製タックエンドファイルについて――

横浜市開業 紅林尚樹

 

3.AnaeroPak・ケンキの使用経験

大阪市開業 小川 歓

 

4.イオン導入法のすすめ

東京都開業 小山隆夫

 

5.修復充填物への細菌付着について

朝日大学教授 山本宏治

 

 

1.難治性根尖性歯周炎に関する細菌学的研究

‐難治性根尖性歯周炎症例からの分離菌種とtherapy-resistantな菌種‐

吉田匡宏・口隆貢(大阪歯大・口腔治療)

近年,通常の歯内治療を施しても効果のない難治性根尖性歯周炎(therapy-resistant periapical periodontitis)が注目されている.いくつかの難治性根尖性歯周炎の症例からさまざまな細菌あるいは真菌が執拗に検出されることが報告されているが,難治性根尖性歯周炎の原因や難治化するメカニズムについては明らかでない.

本研究では,難治性根尖性歯周炎の成立にどのような細菌あるいは真菌が関与しているのかを明らかにするために,分離菌を検討した.さらに,難治化させる細菌あるいは真菌を明らかにする目的で,治療に伴う分離菌の経時的変化を検索した.

実験材料および実験方法

 被験歯には,難治性根尖性歯周炎と診断した33歯を選んだ.また細菌検査時の臨床症状を診査した.細菌検査と治療は「チェアーサイド嫌気培養システム」の術式に従い、培養陰性が得られるまで繰り返した.コロニーが発育した場合その種類と数を測定し,同一と判定したコロニーを約10個ずつ採取した.コロニーは純培養性、グラム染色性および酸素要求性を決定したのち, -80℃で凍結保存した.菌株のうち,偏性嫌気性菌はAPI 20 A,通性嫌気性レンサ球菌はAPI 20 Strep,ブドウ球菌はAPI Staph,通性嫌気性グラム陽性桿菌はAPI 50 CHとAPI coryne,通性嫌気性および好気性グラム陰性桿菌はAPI 20 E,さらに真菌はAPI 20C AUXを用いてそれぞれ簡易同定した. 

実験成績および考察

1.すべての難治性根尖性歯周炎の症例から細菌あるいは真菌が分離されたことから,難治性根尖性歯周炎は通常の根管治療では細菌あるいは真菌が排除できないことによる難治性の感染症であると考えられる.

2.分離菌としてはStreptococcus, Candida, Enterococcus, Staphylococcus,偏性嫌気性菌,EnterobactorあるいはLactobacillusが単独または優勢に検出された.

3.治療には「チェアーサイド嫌気培養システム」に基づく抗生剤局所投与が効果的であり,1回の局所投与で1/3の症例で,また3回の局所投与で2/3の症例で細菌あるいは真菌が排除でき,最終的にはすべての症例で培養陰性が得られた.

4. 治療に抵抗した残存菌としてはE. faecalisC. albicansS. oralisP. aeruginosaが優勢であった.

 以上のように,難治性根尖性歯周炎の成立にはさまざまな細菌あるいは真菌が関与していることが明らかになった.また,最終的にE. faecalisC. albicansS. oralisP. aeruginosaが執拗に残存したことから,これら細菌や真菌の薬剤耐性のみではなく薬剤浸透を阻害するバイオフィルム形成能についても検索する必要がある.

 

2. チェアーサイド嫌気培養装置の臨床応用8

――Ni-Ti製タックエンドファイルについて――

                          横浜市開業 紅林尚樹

 今般、超弾性特性により根管の追従性に優れたNi-Ti製ファイルが臨床に頻用され始めました。今回我々は、特にファイル破折に対し工夫がなされ、低速コントラアングルに装着することにより根管拡大時間の短縮が可能になったGC社製タックエンドファイルRを使用し、クラウンダウン法にて根管拡大.形成した根管と、ステンレス製手用ファイルを用い根尖側より根管拡大.形成した根管の細菌検出頻度について比較検討いたしましたので報告いたします。

 

3. AnaeroPak・ケンキの使用経験

                             大阪市開業 小川 歓

チェアーサイド嫌気培養器を使い、従来のBBLのガスパックによる嫌気培養と三菱ガス化学会社製のAnaeroPak・ケンキを用いた嫌気培養法とを比較した。

方法

 サンプルは、患者の被検歯の根管から同じ条件で採取した。

培地も2枚の同じCDC処方の嫌気性菌用血液寒天培地を用い、サンプルをカルチュレットで塗抹し、それぞれ二つの嫌気培養器で異なる培養法で培養した。

2〜7日間培養し、培養結果を比べた。

結果

 1.無菌試験

  被険歯 11歯の20根管

   三菱、BBLとも培養陰性、                  16根管

   (もしくはともに培養陽性で発育に差が無かったもの)

   三菱で陰性、BBLで陽性                   4根管

   三菱で陽性、BBLで陰性                   0根管

 2.感受性試験

  被険歯  3根管

   両者に差が無い                      1根管

   三菱が発育の悪い                     2根管

      うち、感受性試験の結果が著しく異なる        (1根管)

         感受性試験の結果は差が無い          (1根管)

結論

 無菌試験、抗生物質感受性試験ともにAnaroPak・ケンキは結果が芳しくなかった。特に無菌試験では偽陰性が生じると治療の予後に重大な反古を生じうるので、AnaroPak・ケンキは口腔内の根管内および根尖周囲組織の細菌検査には不適である。

4.イオン導入法のすすめ

                           東京都開業 小山隆夫

 従来は、かなり使用されていたイオン導入法は、名前さえ御存じない先生方もいらっしゃると思います。そのイオン導入法をなぜ熱心にやるようになったか、また、そもそもイオン導入法とは何か、従来のイオン導入法との若干の相違点、注意点、ノウハウの一端をお示ししたいと思います。

     使用機材:昭和薬品化工製 カントップ・Jr

     使用薬液:サフォライドおよびサフォライドRC

     使用方法:かならずラバーダム装着

         (無菌術野の確保と薬液の飛散の防止及び電極の保持に便利)

 

 

 

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