「歯性感染症を考える会」だより 第1号

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前略

 

 先生におかれましては、ますますご健勝にてご活躍のことと存じます。

 「チェアーサイド用嫌気培養システム」は活用されていますでしょうか。

 「歯性感染症への的確な対応を考える会」では、「チェアーサイド用嫌気培養システム」をより臨床で役立てていただくために、新知見のお知らせ、臨床で役立つ考え方、使用法のアドヴァイスや臨床で生じた疑問に対する解答など、先生とのコミュニケーションを積極的に図りたいと考えております。

 

 

 

 

○ 現在「チェアーサイド用嫌気培養システム」をご利用いただいている先生へ

 

1. 諸般の事情から抗生物質感受性ディスクや抗生物質の配送が遅れまして申し訳ありません。

2. 細菌検査を行った、あるいは行っている症例について、出来るだけ初診時の臨床症状、細菌検査時、発育の程度(10個以下のコロニー,+; 99個までのコロニー,++; 100個以上のコロニー,+++)、感受性試験の結果、投与抗生物質などを記録しておいて下さい。近日中に記載用紙をお送りします。

3. 疑問点が生じましたら、すぐ事務局(小川または坪井歯科医院)にご連絡ください。

4. 12月に「チェアーサイド用嫌気培養システム」会員の症例検討会(仮称)を開催いたしますので、気持ちの準備をしておいて下さいますようお願いいたします。

5. 今後、会のより一層の盛り上がりを期待しまして、新知見(論文が主体)が出次第、コピーをお送りしたいと思います。

6. 何かご意見がございましたら、事務局までご連絡下さいますようお願い申し上げます。

7. 動機づけが不安になるなど、もう一度講習会にご参加なさりたければ、予め事務局に連絡の上、ご参加下さい。無料です。 

 

 

○現在「チェアーサイド用嫌気培養システム」をご使用になっていらっしゃらない先生へ

 

1. もし、難治症例を手がけようとしていらっしゃるのでしたら、長ければ半年以上かかる症例もあります。両者(歯科医師と患者)とも費用や忍耐が必要なことをよくよく合意していただいた上でなければ長続きしませんので、ご留意下さい。

2. 難治症例では、抗生物質を局所投与することによって、菌交代現象が起こることがよくあります。病巣内にCandida albicansのような真菌が少しでも混在していますと、この菌はたちまち優位菌に変わります。このような場合、局所にAMPHを投与し、他の細菌に有効な抗生物質を全身投与しますと効果的です。 AMPHは必ずC. albicansであることを確認したあと局所投与して下さい。 C. albicansであることを確認するには3つの方法があります。

1)        光学顕微鏡(x1000)で観察する。 C. albicans は大きな細胞ですから、容易に解ります。

2)        サブロー培地(増田理化工業で販売しています)に当該コロニーをうすく塗抹して、発育をみる。夏場では室温に2〜3日放置し、発育すればC. albicans とみなします。

3)        嫌気培養を終えたあと、培地をすぐ捨てずに、室温で1週間ぐらい置いておく。もし、 C. albicans が混在していると白いクリーム色の丸みのあるコロニーが徐々に発育してくるのが解ります。

3. 感染根管は一先ず置いて、まず抜髄根管の細菌検査をお始めください。私たちの最近のデータでは、抜髄根管の約35%から細菌が分離されます。そのうちコロニーの少ない症例では、平均1.3回の通常の根管治療で陰性に導けます。

4. しかし、2回以上の根管治療でコロニーが減少しない症例や、100個以上のコロニーがみられるような抜髄根管では、感受性試験をし、有効な抗生物質を局所投与することによって、治療回数が短縮されます(逆に、従来の根管治療によるFC、TF貼薬では、これらの症例から細菌を取り除くのは困難です)。

5. 抜髄根管処置を行った歯を根管充填前に無菌にできれば、講習会でお見せした慢性根尖性歯周炎の根管充填材先端部根管の細菌塊は生じませんし、それに続く根尖病巣は起こらないのです。少なくとも、ご自分が抜髄処置に携わった歯から根尖病巣はなくなることになります。再度、抜髄根管の細菌検査からお始めください

6. もし、「チェアーサイド嫌気培養システム」をお使いになる自信がなければ、もう一度講習会をお受けください。無料です。ただし、予め事務局までご連絡下さい。

7. もう一度、−歯科治療に基準をもたすためには細菌検査が必要である−を思い出してください。

8. 1本の歯を無菌状態で根管充填する喜びを味わってみてください。

9. 第6回、第7回「チェアーサイド嫌気培養システム」講習会の日時、場所が決まりました。お近くで興味をお持ちの先生にお知らせいただければ幸甚です。

 

          「歯性感染症への的確な対応を考える会」世話人一同

 

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