平成26412()

歯性感染症を考える会

平成25年度総会・症例検討会

 

総会

司会 小川 歓

「歯性感染症を考える会」の会長人事について

ごあいさつ

「歯性感染症を考える会」会長 坪井新一

 

症例検討会

1.   「根管治療できる?できない?」

        小川 歓

  根尖の透過像が大きい症例、根尖が頬側に突出している(フェネストレーション)症例、透過像が上顎洞に近接している症例など、根管治療に手をつけるべきかどうか迷う事が多々あります。CT画像はそのような見極めの一助になります。しかし、CT撮影装置はまだまだ高額で、なかなか手を出しにくい機器です。私は近隣のCT所有の先生に撮影をお願いし、参考にすることで有用な情報を得ることができるようになりました。根管治療を諦めた症例、早期に外科的アプローチを併用した症例、長期戦覚悟で根管治療を開始した症例などをご紹介いたします。

 

2.   症例発表  − 移植症例、困難症例

西宮市開業 杉谷 秀夫

@   移植後に嫌気培養により根治を行ない長期的に安定している症例

A   下顎第一大臼歯の遠心根しか治療を行えなかったが、透過像は消失した症例

            

 

3.   根管を無菌にする方法

             浜松市開業 鈴木 孝彰

 30年以上の臨床経験の中で、根管治療の真髄は「根管内を無菌にする事」だと気付かされたのは(歯性感染症を考える会)との出会いがあったからです。様々な根管治療の講習会や講演会を聞いて、その時々のトピックスやテクニックや機材に翻弄されましたが、チェアーサイド嫌気培養システムを取り入れて、根管を無菌に出来る様になってからはエンドに対するブレが無くなりました。 そこで今回の発表は、簡単に根管内を無菌にする私なりの方法をご紹介したいと思います。独断と偏見に満ちた発表になるかと思いますが、先生方の忌憚のないご意見をお聞かせ頂いて、明日からの臨床の楽しみを増やしたいと思いますので、ご指導ご意見をお聞かせ下さい。よろしくお願いします。

 

 

4.歯内治療を成功させるために

‐歯性感染症としての対処と可能性‐

                  大阪歯科大学 准教授 吉田 匡宏

 

 歯内治療はなぜ難しいのでしょうか?

 私が歯内治療を専門として学んだ35年の間にも、非常に多くの研究が行われ、臨床器具、薬品や治療法について多くの改良が行われてきました。しかし、治療成績が飛躍的に良くなったという話は聞きません。なぜ長年にわたる努力が臨床結果に結びつかないのでしょうか?

 歯内治療領域の疾患が基本的には感染症であることをお座なりにしてきた結果と言えると思います。

もちろん臨床では根管内をできるだけきれいにするべく、根管清掃を徹底しますし、根管清掃剤や貼薬剤も使用しています。しかし、それだけではだめなのです。現在の歯内治療では「根管内をきれいにして、緊密に充填する」ことが原則として考えられていますし、行われる処置もこの原則に則ったものです。しかし、 歯内治療領域の疾患、特に根尖性疾患を考えるとき、この原則には問題があると考えられるのです。感染根管に対する細菌学的研究の結果、多くの知見が得られていますが、それらの知見が必ずしも臨床に反映されていないことが問題なのです。

 長い間、原則として考えてきた「根管内をきれいにして、緊密に充填する」という考え方自体のどこに問題があるのか?どう考えるべきかについてお話ししたいと思います。

 歯内治療領域の疾患を感染症として捉え、細菌を徹底的に排除するために私たちは「チェアーサイド嫌気培養システム」を開発し、臨床に応用してきました。このシステムでは細菌検査の結果を指針として治療を進め、細菌を排除困難な症例では感受性試験で有効性を認めた抗菌薬を局所投与します。こうして徹底的に細菌を排除するのです。

 臨床応用した結果、一般の歯内治療の臨床成績を飛躍的に引き上げることができただけでなく、通常の歯内治療では治癒が得られなかった所謂難治性根尖性歯周炎症例でも多くの症例で治癒が得られました。もちろん、感染細菌を排除することは簡単ではありません。しかし、少なくとも歯内治療をシンプルに捉え、ロジカルに対応できると感じています。

 今回の講演では実際の症例を多く提示しながら、細菌感染症であるという原則に立って歯内治療を徹底することの重要性と可能性についてお話ししたいと思います。